R18+映画『お嬢さん』感想&解説>>>美とエロスの狂宴
先週末に観てきました韓国映画『お嬢さん』(韓国語:アガシ「아가씨」)
韓国映画は久しぶりですが
これは大ヒット!炸裂でございました
秀逸なサスペンス & 男の欲望に搾取されてきたお嬢様と侍女の脱出劇
++美しい百合映画
男性との絡みはほぼありません。安心してご覧いただけます(なんのこっちゃ笑)
145分間・パク・チャヌクの耽美(変態)な世界をお楽しみください
お子様は年齢制限がありますのでご覧いただけません・早く大人になりましょう
あしからず
≪≪ 目 次 ≫≫
映画登場人物&概要
1939年日本統治下の朝鮮半島。とあるお屋敷で物語は展開されていく
日本語と韓国語で会話が交わされるのですが 聞き取りにくい
冒頭~物語導入部まで、この発音に気をとられ映画に集中できずにいたので
人物や背景が??状態。以下を読んで予備知識を得ておくと便利
登場人物
秀子お嬢様:日本の両親を幼くして亡くす。朝鮮にいる叔母夫婦に引き取られるがその叔母も自殺。血縁関係のない叔父と暮らす。朗読が日課
スッキ(珠子):スラム街で詐欺グループに育てられた孤児の少女。子守りが得意。お嬢様の専用侍女
自称:藤原伯爵&詐欺師:ヒデコお嬢様の莫大な財産を狙う。日本人を装った朝鮮人でイケメン風
上月叔父様:大の日本好き・日本人になりたいと思っている朝鮮人。ただの変態ではなく耽美主義。日本の没落貴族の娘を嫁にし上月姓を手に入れる
上月叔母様:日本の没落貴族の娘。秀子お嬢様の叔母。遺伝で精神面が弱いらしい。(夫に押し付けられた)趣味は朗読
佐々木夫人:上月の元朝鮮人妻。同じ屋敷で暮らしている。上月は今でも「抱いている」とのたまう
※序盤・叔母&叔父に前妻=佐々木夫人の関係が分かりにくい
概要
詐欺師が財産目当てに結婚詐欺を働こうとして~2転3転する
スッキは詐欺師と知り合い財産強奪の計画を練る
彼女の役目は莫大な財産の相続権を持つ華族令嬢・ヒデコの侍女となり伯爵と上手くいくよう仕向けること
ヒデコは支配的な叔父++膨大な妖しい蔵書に囲まれた豪邸の敷地内から一歩も出ない世間知らず ←なので騙しやすいだろうと思う悪党達
ヒデコを誘惑→結婚→その後は彼女を精神病院に入れ、財産を奪うつもり。計画は順調に進むが、献身的なスッキにヒデコが心を開き、スッキもお嬢様のことが…ある晩お嬢様がスッキに殿方との閨について聞いてきて。。。★むふふのふ
お嬢様の爪を切るスッキちゃん
以下ネタ~バレばれ
映画は三部構成
- 一部はスッキの視点
- 二部は秀子の視点で事件の瑣末が描かれ
- 三部で衝撃的な真実が!明かされる
一部
スッキが詐欺師と組み、結婚後お嬢様を精神病棟へ送り込む!算段でした
が
実際・精神病院へ幽閉されるのはスッキという衝撃的な展開で幕を閉じる
この時の東北弁は見ものですw
いきなりなんてことをしてくれるのか・・笑いがとまらない
二部
過去の回想で一部の衝撃展開の理由が判明
実は詐欺師とお嬢様は知り合い。お屋敷から逃げ出すために&お金のためにお互いを利用したのだった
お嬢様→抑圧された生活からの自由
詐欺師→美しさと財産&儚くも芯のある秀子に惹かれ協力を約束
この時点でスッキはスケープゴートだったが、、、惹かれあいその後の百合展開でお互い気が変わる
すれ違いもあったけれど、叔母が首を吊った桜の木の下で女二人和解しあいます
詐欺師に騙されたふりで結婚。スッキを病院送りにしたように見せかけ
抜け出し待ち合わせ。外国逃亡を企てる二人 ←男の追っ手が迫る
中段の写真 ↓紳士の前で 叔父に変な体位をとらせられるお嬢様
三部
スッキの得意技で難所を切り抜け上海に向かう百合二人
詐欺師は叔父から拷問を受けます(お嬢様を逃がした+見つかり)
地下室の拷問部屋でお嬢様との「初夜について詳しく話せ」と
変態叔父上・大興奮
指を一本ずつ裁断機にかけていき、何とか話を聞き出そうとするも
詐欺師・機転を利かせ両者死亡
♂「ペニスの裁断は守ったぜ」
ようやく自由になった女性たち
鈴を使った『水琴窟』playの女性陣・愛しあいながらエンドロールをむかえた
完
叔父上の偏執趣味
叔父上は『朗読会』と称し妻&姪に金瓶梅や日本の春画(下記に画像あり)を読ませる
日本の紳士を集め→魅力的な読み聞かせでもって高値で本を売りつけていたようですが後にそれは「金目当てではなく趣味」だったことが判明
はじめ叔母が朗読係りだったが気が狂って自殺→お嬢様にやらせる流れ
練習風景で「おまんこ」等と子役の女の子が言う様はなんとも滑稽
そんな言葉現在のAVや男性向け雑誌とかでしか使わないのでは・・監督まさかみてるのかしら??そんな言葉実際は使わないよと不安になるがまあいい
ちなみにお嬢様に手は出していません・イヤラシイ話を聞くのが好きだと三部でおっしゃっていました
地下には高尚な趣味で飾られた拷問部屋をお持ちです。高尚すぎてついていけない。「切り取られたヴァギナ」や「指」のホルマリン漬けに蛸の水槽まであり→流石叔父上
←日々の日課:朗読の指導中
『蛸と海女』 →
葛飾北斎による1820年頃の艶本『喜能会之故真通』(きのえのこまつ)の中の木版画の一枚。叔父上、秘密の地下室に蛸飼っていらしたのでこのプレーが実際にみられるかと思いきや。。。まさかのスルー。まあ、あの場面では詐欺師しかいないので男相手にやられてもね・みたくない。何だったらトマス・ハリス小説『ハンニバル』で妹のマーゴが兄の口にウツボを突っ込んで舌に噛みつかせ~類いの拷問でもよかったかも。。
一緒に観にいった彼は「CGにお金がかかるからやらないんだよ」とツマラナイコト言ってましたが
み・た・か・っ・た
2人のその後
1939年・上海に逃亡したお嬢様とスッキ
当時の上海周辺はお金があれば幸せになれるとは言えず・その後の二人が心配
1937年は日中戦争開始
1941年には太平洋戦争が勃発し日本軍が上海の共同租界にも進駐してくる
きな臭い時代です
あの2人のことだから、戦争のドサクサに紛れてうまい事しているかもしれない
原作&監督の小噺
サラ・ウォーターズの傑作『荊の城』~Fingersmith
舞台は19世紀半ばのイギリス、ビクトリア朝時代のお話
原作とは二部から流れが異なっていきます
一部での衝撃展開に「何この展開面白い」と思ったら原作も読んで二度楽しめる筈
ラストも異なるのは
監督「男たちに復讐して欲しい。一読者としての願望を映画の中で叶えようと思いました」
パク・チャヌク・わかってるじゃないか!!グッジョブ!!
パンフレットは勿論買う
使われているフォント「と」が読みにくいい・・
監督『当時、日本に支配されながらも、日本人や日本文化に憧れた人たちもいて、その理由や心理をきちんと描きたいと思いました。日本風や英国風などの建物が建設され、文化的にも非常に興味深い時代だったのです』
『Male Gazeの視点。男性視点で撮ってはいけないと、自ら検閲しながら撮っていました』
この監督の作品からは「嫌な感じ」は受けませんでした
日本に憧れていた人もいたなんて言って大丈夫かな?と心配してしまうほど
韓国は歴史&政治が絡むと異常な雰囲気になりがち
ドラマも映画も好きな作品が多い
食べ物も美味しい
パク・チャヌク監督のような方がいると嬉しいですね
残虐描写も少なく観やすい作品です
構造:ヒエラルキーからの脱却
支配層の日本人と朝鮮人
日本人でも朝鮮人の夫&叔父に支配される叔母&秀子
叔母は死ぬことで&秀子は新天地へ~支配から逃れる
男と女
詐欺師♂がお金目当てで秀子をいいように扱おうとする。スッキも騙す
女と女
秀子とスッキ共に手をとり国外へ逃れる
終わりに
アガシ=お嬢様役のキム・ミニちゃんがお気に入り
本国でも恋おおき女優として活躍なさっているそう
可愛いスッキちゃん役はオーディションで選ばれた新人!今後が楽しみです
いくつか疑問も残り
①なぜ叔母を殺したか?
お嬢様は日々変態本で世の中を学んでいきます・そんな折
「叔母が首吊りしても遺体が綺麗だったのは何故か??」と叔父に尋ねると
地下に連れて行かれ秘密を見せられるわけです
水が溜められたスペースもあり、そこで叔母を殺してから首を吊ったようにみせたので死体が汚物まみれにならず綺麗であった。ということを示していたと思うのですが
なぜ殺したのか??または地下で自殺?
②スッキがスリの女頭領?からもらった簪に意味はあるのか??
冒頭、日本語がわかりにくくて集中できず
③いつも着用している手袋の意味。幼少時に叔父から素手を折檻されたせいだと思うのですが。。
又みる機会があったらこのへんを意識して観てきたい
※ヒデコお嬢様の日本語がたどたどしく慣れるまで大変。字幕が欲しかった
侍女が日本語で話すとお嬢様は「韓国語で話して」という場面もあり
映画ポスター2種類。絵が微妙に異なります
韓国語のほうは桜が咲きお嬢さんがぶらさがっていたり
叔父が増えてる。。 ↓ ↑ クリックで拡大
興味があれば是非みていただきたい作品です
主役二人の裸体は言うまでもなく建物や衣装・映像がとても素敵で
ところどころ笑える箇所もあり、いやらしさがありませんので
女性もみやすいとおもいます
+++戦前の建物が多く残る三重県を中心にロケをしたそう
三重に行くことがあったらよってみたいな